1

7/21
前へ
/528ページ
次へ
「さあ、何故でしょう?」 数々の女の子を奪っていった笑顔。 うえっ。 吐き気を催している時に、カチャッ、と鍵を閉める音が聞こえた。 「おまっ、なんで鍵閉めてるんだよっ」 「だって、こうでもしないと先輩逃げちゃうでしょ?」 やたら疑問系に話すのも、イラッ、とする。 萩原が俺に近づいていく。 俺はその距離を広げようと、後退りする。 トンッ、と背中に感じる物体。 ロッカーだ。 焦って前を向くと、萩原の顔が息がかかるほど近かった。 「先輩、なんで逃げるんですか?」 「誰だってそんな風に近づかれたら逃げるだろ!」 きょとん、としている萩原が憎たらしい。 「ほら、逃げないから離れろよ」 「いやです。こうしなきゃ、先輩、俺の目みてくれないじゃないですか」 確かにこんな状態じゃなきゃ、おまえの顔みねえよ。 心の中で毒づくと、余計に萩原が顔を近付けてきた。 「ちょっ、おまっ、顔近すぎっ!」 しばしの無言の後、萩原の目が俺をまっすぐ見た。 「先輩のこと、すきです」 「は?」 俺はおそらく、ここ最近で一番の間抜けな声を出した。 .
/528ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9000人が本棚に入れています
本棚に追加