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「さあ、何故でしょう?」
数々の女の子を奪っていった笑顔。
うえっ。
吐き気を催している時に、カチャッ、と鍵を閉める音が聞こえた。
「おまっ、なんで鍵閉めてるんだよっ」
「だって、こうでもしないと先輩逃げちゃうでしょ?」
やたら疑問系に話すのも、イラッ、とする。
萩原が俺に近づいていく。
俺はその距離を広げようと、後退りする。
トンッ、と背中に感じる物体。
ロッカーだ。
焦って前を向くと、萩原の顔が息がかかるほど近かった。
「先輩、なんで逃げるんですか?」
「誰だってそんな風に近づかれたら逃げるだろ!」
きょとん、としている萩原が憎たらしい。
「ほら、逃げないから離れろよ」
「いやです。こうしなきゃ、先輩、俺の目みてくれないじゃないですか」
確かにこんな状態じゃなきゃ、おまえの顔みねえよ。
心の中で毒づくと、余計に萩原が顔を近付けてきた。
「ちょっ、おまっ、顔近すぎっ!」
しばしの無言の後、萩原の目が俺をまっすぐ見た。
「先輩のこと、すきです」
「は?」
俺はおそらく、ここ最近で一番の間抜けな声を出した。
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