懐中時計

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そっと中に足を踏み入れた日和だが薄暗い店内に少しだけ戸惑う。すると先ほどの黒猫がカウンターの上に座っていた。 シルクの座布団が敷かれている上に横たわる黒猫。それはそこが指定席だと記しているようだ。 「いらっしゃいませ」 突然の声に驚いて飛び上がる日和。するとそこに立っていた彼はにこやかに笑みを浮かべていた。 「あの…私その猫ちゃんに…」 「あぁ。そうでしたか。ガイド。またお客さんを連れてきてくれたのかい?」 にこやかに笑い猫へ視線を向けると猫はふいっとそっぽを向いてしまう。 「何かお困りの様ですね」 「え?」 見抜かれたように言われ一瞬戸惑う。すると紅茶を入れながら座るよう促す彼に思わず素直に座ってしまった。
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