57人が本棚に入れています
本棚に追加
『その封印とやらは、ナギが聖地に立ち入れないようにする為のものか?』
落ち着き払った様子でそう尋ねるラスタリカに対し、こくりと首を縦に振るユリウス。
少年の揺るぎない肯定を受け、ラスタリカは言って良いものか悩んだ挙げ句、感慨深そうに呟いた。
『私達が創造神と呼ばれるのであれば、さしずめ彼女は破壊神といったところか……』
『…………』
何の宛も無く、複雑な心境めいた表情で光の彼方を見据えるラスタリカ。その視線はどこか、穏やかな表情で今なお眠るリフィリアの方へと注がれているようにも見える。
対するユリウスはラスタリカから顔を背け、彼の呟きにどう答えて良いのか分からないでいるようだ。
一呼吸の後、ラスタリカは腰に携えていた剣を鞘から抜き放ち、ユリウスに献上するかのように差し出した。
『――!? ラスタリカ、いったい何を……!?』
『私はもう、この世界での役割を終えた。私のような老いぼれが、これ以上無駄に生き長らえる必要はあるまい』
驚きのあまり言葉を失うユリウスをよそに、飄々(ひょうひょう)とまるで他人事のように言葉を並べていくラスタリカ。
その行動が意味する彼の意思を、ユリウスは既に理解しているようだ。いつもは仮面を被ったようなポーカーフェイスの彼にしては珍しく、全く動揺の色を隠せないでいる。
最初のコメントを投稿しよう!