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『お前には最後の最後まで、辛い役目ばかり押しつけてしまったな。すまない……。だがそれ以上に、お前には感謝している。ありがとう――ユリウス……』
『ラスタリカ……っ!』
『あとの事は……頼んだぞ――』
ラスタリカの方へと伸ばされたユリウスの手が、虚しく空を掻く。
まるで、砕かれた金銀の剣が彼の生命の存続を繋ぎ止めていたかのように、ラスタリカの体躯は塵となって消え去った。
あとに残るは、持ち主を失った白の剣士服と、無惨に壊れて原形を留めていない剣のみである。
一人取り残されたように立ち尽くすユリウスは氷牢の中のナギ、リフィリアと順に目をやり、沈みきった声色で呟いた。
『――リフィリア……。ナギが君を憎む理由が、ちょっとだけ分かった気がする。だって、君が世界の存続を望まなければ、僕達が悲しみに暮れる現在(いま)は無かったのだから……』
『…………』
無論、今なお穏やかな表情で眠り続けるリフィリアの口から、少年の呟きに対する返答が紡がれる事はない。
ユリウスは全てに絶望したかのように天を仰ぎ、この光の世界に漂う無味乾燥な時の流れに暫し、身を委ねた――。
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