82人が本棚に入れています
本棚に追加
トントントン
静寂の中、包丁で野菜を切る音だけが鳴り響く。
「おっ!美亜じゃん!!夕食作ってんのか?」
「そうだよ」
「お前の飯、美味いもんなぁ……。今日は何だ??」
釜の中を覗き込むようにして訊いてきた。
「はぁ……。今日は七草粥だよ。蓮斗(レント)、あなた全部食べないでね?」
「食べねぇよ、全部は!!たくっ。特に今日は、正樹(マサキ)様がいらっしゃるんだ」
正樹様。
この家の、主(アルジ)。
ほとんど戦に出ているため、家に帰ってくるのはたまにだけだ。
その間、この家と正室の陽子(ヨウコ)様、その他の側室の方々。
そして、御子様たちを守るのがあたしたちの役目。
あたしだって、戦えるんだから!!
そのかわり2年の間で、ずいぶん手が赤に染まった。
殺さなければ、あたしが殺される。
そんなの、いや。
.
最初のコメントを投稿しよう!