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僕は目の前の女の子に見とれていた。
そのくらい、目の前のその女の子はとても整った顔立ちをしていた。
美人と言うよりは、むしろ人形のように可愛らしいと言った方が彼女には相応しいだろう。
そして、制服の袖からスラリと伸びる白くて細い腕、その小柄な体格と可愛らしい顔に似合つかわないほど大きく膨らんだ胸元、それらの全てが僕の視線を釘付けにするには十分すぎるほどだった。
「べ、別にいいんじゃないかな。お弁当を電子レンジで温めたって。それでだれが迷惑をするわけでもないし、電子レンジだって使ってあげなきゃかわいそうだっていうもんだよ」
僕は言いながら、自分でもよく訳のわからないことを言っているなと思った。
そのくらい、僕は動揺していた。
もっと正確に言うのであれば、僕は彼女に一目惚れしたのだ。
女の子は安心したような表情を浮かべると、「よかった」と言って、フッと息を吐いた。
「ところで、あなたは?」
女の子が言った。
「俺は金田佑樹」
「私は桜原美結だよ。2年C組なんだけど、あなたは?」
「俺は2年B組だよ」
僕は答えながら、変だなと思った。
同じ学年の人間であれば、名前はわからないにしても、僕は大抵の人間の顔は知っている。
だけど、僕の記憶のどこを探しても、彼女の記憶はない。
僕が少し戸惑っていると、美結が言った。
「同じ学年なんだね。よかった。私、最近この学校に転校してきたばかりなの。だから、まだお友達とかほとんどいなくて」
「そ、そうなんだ」
僕は弁当を持っていない左手で、後頭部の辺りをポリポリと掻きながら答えた。
美結は僕の言葉に、小さく頷いてから、僕に言った。
「ところで、あなたは何をしにここにやって来たの?」
「僕も、弁当を温めにここに来たんだ。毎日ここに来ているんだけどね」
「そうなんだ」
美結の顔が一気に輝くのが僕にもわかった。
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