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そんなふうにして、一ヶ月くらいの時間が流れた。
その間に僕と美結はずいぶん仲良くなっていたし、時には家庭科室の外でも一緒に時間を過ごすこともあった。
どういうわけか、美結は必ず僕よりも先に家庭科室にいた。
僕と彼女の教室は隣なのだし、家庭科室までの距離はそれほど変わらないはずなのに、僕が家庭科室に行くと、必ず美結は電子レンジの前で鼻歌を歌いながら、弁当が温まるのを待っていた。
それは、朝からひどい雨の降る日だった。
その日も僕は昼休みになると、一直線に家庭科室を目指した。
そして、家庭科室の扉の前に立つと、一度大きく深呼吸した。
僕の心臓は張り裂けそうなほどに高鳴っている。
僕は一つの決意をしていた。
今日こそ美結に告白する、それが僕の決意だ。
そして、僕は高鳴る気持ちを一生懸命に押さえながら、扉に手をかけ、勢いよく開けた。
だけど、そこには、いつもいるはずの美結の姿はなかった。
僕は少し拍子抜けしながらも、どこかホッとしたような気持ちになり、近くの椅子に腰を下ろして美結がやってくるのを待つことにした。
しかし、美結はいくら待ってもやってこなかった。
十分、十五分と、時間だけが無情に過ぎてゆく。
何かあったのだろうか、僕は美結を心配に思いながらも、とりあえず自分の弁当を温めておこうと思い、立ち上がって電子レンジを開けた。
すると、そこには、いつも美結が使っていた弁当箱と、一通の手紙が入っていた。
僕は慌てて手紙を取り、それを読んだ。
~~~~~
金田君へ
突然のことでごめんなさい
私、転校することになりました
本当はきちんとお別れをしたかったのだけど、時間の都合上それができそうにありません
金田君と一緒に過ごした昼休み、本当に楽しかった
ありがとう
お弁当は、私から金田君へのプレゼントです
私の手作りだから美味しくないかもしれないけど、食べてもらえると嬉しいです
美結
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