六人の部員

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「はあ・・・」 五月の日差しの中、教室の壁にもたれ掛かりながら、俺はひとり溜息をついた。   俺・・・倉田光(くらた ひかる)はK県立権太坂高校、通称「G坂高校」の一年生であり、演劇部の部員である。 そして、ここは校舎(一号館)の端にある演劇部の部室である。 「やっぱ、早く来すぎたか・・・」 俺は呟いた。   授業が終わると俺はすぐに自分のクラスの教室を出て部室に向かったのだが、俺は今日最初の演劇部部室入室者となり、そして二十分たった今でも他の部員は誰として来ていない。 「ウチのクラスはホームルーム早いからな・・・・とはいえ」   そう言って俺は腕時計を見た。 「さすがに全員来ないってのも変だな。エイミーの奴なら一番乗りしててもおかしくないんだが」   あいつのクラスもホームルーム終わるの早いし、と俺がひとりごとを言おうとしたその時だった。 「呼びました?兄さん」 ーガラッー  部室の掃除用具入れから、一人の女子生徒が出てきた。 「うわっ!!」   俺は、思わず大きくのけぞった。 「何ですか。お化けでも見るような顔して」   そう言ってむくれる、この銀縁眼鏡をかけたボブカットの女は扇島恵美(おうぎしま めぐみ)・・・名前の「恵美」が「えみ」とも読めることから「エイミー」と呼ばれている。
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