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春。
それは生命の誕生する季節。
気温が高まり、動物たちは長い冬の眠りから醒め、ヒラヒラと蝶が舞い、そして色とりどりの花が咲く。
しかし、誕生だけでなく失われていく生命もある。
.・:*・゚*:。.:*・゚
古くからこの学園にあるという桜の古木の根本に座り込んで、上を見る。
どうしても耐えられなくなったときはいつもここに来て座り込んでいる。
この裏庭にはほとんど誰も来ないので、一人になりたいときは丁度良い。
四月だと言うのにこの桜は咲いていない。
この桜はもう五年以上は咲いていないという。
そういえば俺がこの学園に入学したときも咲いていなかった気がする。
あれから一年。
女手一つで俺を育ててくれた母親が再婚した。
そこからはあり得ないような事の連続で…。
「あのね……、紹介したい人がいるのっ!」
「……はぁ?」
自室にいた所に母親に呼ばれた。
何かそわそわしてると思ったら突然そんなことを言われ、俺はただただ呆然とした。
「やっぱり…駄目、なのかしら…」
俺の母、夏樹は大きな目に涙を浮かべシュン、と項垂れた。
「ちょ、駄目なんじゃなくてっ!」
「ホントに!?お母さんの再婚、認めてくれる、」
「再婚っ!?」
「やっぱ若葉は認めてくれないのねっ…!」
「い、いやいやいや!そういう訳じゃなくて!!」
話の噛み合わない母を落ち着かせ俺に分かるようにちゃんと説明をしてもらう。
どうやら母、夏樹は再婚をすると言う。
しかも、さらに話を聞いていけば…再婚相手は有名企業の社長である、市之瀬隼人と言う人物と言うことが分かった。
「…それって、マジ?」
だって母親とそんな凄い人物に繋がりがあるとは考えがたい。
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