咲かない、桜

3/9
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「あら、マジよ?私、はーちゃんとは幼なじみなのよ」 はーちゃんとは、再婚相手の市之瀬隼人さんの事だろうか…。 母は誰彼構わず変なあだ名を付けるのが好きだ。 「はーちゃんは今まで家庭の援助も少ししてくれてたのよ?」 それにね、と母は続ける。 「四年前くらいからプロポーズをされてたんだけど、若葉がまだ小さいからって待っててくれてね、ついこの間またプロポーズしてくれたのよ」 母がうっとりと左手の薬指にはめた指輪を見つめる。 なんだと… そんな前から…すげえ、四年越しのプロポーズすげえ。 それに今まで金銭的な援助までしてくれていたとは。 しかし母は俺を産む前から正社員として働いていて、俺が小さい頃に父が亡くなったが、生活はそれほど困窮している訳では無かったはずだが。 まぁ子どもには分からない何かがあるのだろう。 「だから、」 頬を染め、目をキラキラと輝かせながら母は言葉を紡いだ。 「もう若葉も中三だし大きくなったので、プロポーズをお引き受けしました」 .
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!