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名前を呼ばれ目をしばたたかせた。
市之瀬さんはニコニコと人の良さそうな笑みを浮かべている。
「はっ、はい!!」
背筋をピンと伸ばして返事をすると、彼はクスリと笑い声を零した。
「そんな緊張しないでいいから、ほら二人とも早く座って」
市之瀬さんが指をさすのは黒革のソファー。
なんだか高そうなソファーだなぁ…。
ソファーを見やると、そこに一人俺と同じくらいの少年が座っていることに気づいた。
「あら、冬実くん!」
母が嬉しそうに少年の名前を呼んだ。
「こんにちは、夏樹さんに若葉、くん?」
冬実と呼ばれた少年は、市之瀬さんによく似た整った顔を笑みの形にし、ソファーから立ち上がって頭を下げた。
何だろう、顔は笑っているのに目が笑っていない気がしたのだが、気のせいだろうか。
「こ、こんにちは……」
引きつった笑みになってしまっただろうか。
「さぁさぁ、早く座って」
市之瀬さんが俺たちの後ろに回り背中を押して冬実が座っているソファーに向かわせた。
皆でソファーに座ると、向かいに座っている冬実がにこりと笑みを向けてきた。
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