咲かない、桜

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じっとりと睨み付けると母はあはは、と情けない笑い声を上げた。 「それより、冬実くんの自己紹介よねっ」 話をそらしやがった。 まぁいいや、母の早とちりはいつもの事だし。 「ははは、夏樹は小さいころからそうだよな…。」 幼なじみというのはやっぱり本当なんだ。 「で、紹介が遅れてごめん。この子は冬実、僕の息子で若葉君と同じ15歳だよ」 仲良くしてやってくれ、と市之瀬さんは言った。 「市之瀬冬実です。よろしく、若葉君」 市之瀬さんに良く似た顔でニコリと冬実は笑った。 市之瀬さんと同じ、人の良さそうな笑みなのに彼はなんだか怖い。 「よ、よろしく!俺は若葉です。えーと、仲良くしてください…」 たじたじと答えると冬実はクスリと笑って言った。 「今日から家族なんだから、そんな敬語じゃなくてもいいよ?ねぇ、父さん?」
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