咲かない、桜

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「そうだなぁ、堅苦しいのは無しだよ、若葉」 なんだろう、胸の中がポカポカと暖かい。 隣を見ると、母も目を潤ませながらも微笑んでいる。 なに感動してるんだよ、恥ずかしいな。おかしくて、自然と笑みが溢れてきた。 「これからよろしくお願いします」 もうひきつった笑みは浮かべない。 母と顔を見合せ、微笑んだ。 それから母と市之瀬さん、父は婚姻届を提出して、晴れて俺たちは市之瀬家の人間となった。 暮らしていた3LDKのマンションを引き払い、市之瀬宅へと家財道具やらを運び込んだ。 家具が運び込まれた新しい自分の部屋は、以前のマンションより広い部屋だ。 片付けを終えて、ベッドにばふん、と音を立てて飛び込んでみる。 仰向けになって見上げてみる。以前のマンションよりやっぱり天井も高いな。 しばらく寝転がりながらぼうっと天井を見ていると、 部屋のドアをノックする音が聞こえた。 「はい」 起き上がってドアを開ける。 ドアの前に立っていたのは市之瀬、もとい父さんだった。 「片付けは住んだかい?」 「あっ、は…うん、今終わった所!」 敬語を使わないように話してみると意外とすんなりした。 父さんは嬉しそうにニコリと微笑み、 「ちょっと突然なんだが、話があるんだけど…良いかな?」 少し笑顔を曇らせて言った。
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