幸村 -Birthday-

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俺はこの4月から、推薦で合格した千葉の武道大学に通うはずだった。 俺は極真空手を子どもの頃からずっと習っていて今は黒帯三段、高校2年の時には全国大会で3位入賞したこともある。 空手だけでなくスポーツ全般は得意だが…勉強は全くできない。 希望の進路は大学で更に空手を続けて武道の勉強もして、卒業後は格闘家デビューか体育教師か、それか道場経営者だった。 母子家庭だったが、決して安くない授業料は今話題で人気のエステサロン経営者の母親の稼ぎでどうにかなるはずだった。 ちなみに俺は、自分の母親をババアと呼んでいる。 ばあちゃんや親戚、先生やクラスの女子から注意されてもこの呼び方は変えられない。 どうぞご了承下さい。 去年の11月の終わり頃、大学から届いた入学手続きの書類を手にしたババアは確かにこう言った。 「必要事項だけ雅樹自身で全部記入して。後は私が全部やっておくから」 それを何の疑いもなく信じていた。 夜遊びや男遊びのネックだった息子が、埼玉の分譲マンションの自宅からやっといなくなるんだもんな。 意気揚々と入学と寮の手続きを済ませ、春からは俺を気にせず自宅に男を連れ込むことを楽しみにしているんだと思っていた。
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