悪魔との契約

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あっけない。 人はこんなにも簡単に命を失うものなのか。 血だまりが広がっていく。 手に滴り落ちる血を、呆然と眺める。 「きゃあぁぁぁっ!!」 悲鳴。振り返る。女性。 顔は見えない。背中が遠ざかる。 まずい。まずいまずいまずい。 どうする? あの女性も、このナイフで……駄目だ、足が動かない。 そうしている間にも、女性の姿は消えていった。 どうする。どうすればいい……。 『く……くくくく。短絡的で愚か。何の術もなく、凶行に及んだのか? どうするのか見ものだったのだが、これで終いか』 「だ、誰だ!?」 闇から現れたのは、あの漆黒の犬だった。 「犬が……なんで……」 『さぁ、どうする。早くしないと警察がくるぞ。捕まって、それで終いか。つまらない人生だったな』 終わり? ここで終わりなのか? 嫌だ。 全てはここから始まるはずなんだ。 新しい一歩を、ようやく踏み出せるんだ。 こんなところで、終わりたくない。 『ならば、手を貸してやろう。哀れな貴様の魂に救済を。どうだ?』 「な、何だ。何なんだ、お前は。何者なんだ」 漆黒の犬の口が歪む。 『ただの……悪魔さ』 そうして、悪魔は笑った。
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