伊勢物語の巻

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(3/3ページ) 「早く舟に乗れ、日も暮れてしまう。」 と言うので、舟に乗って川を渡ろうとするのだが、みんなはなんとなく悲しくて、都に恋しく思う人がいないわけでもない。 ちょうどそのとき、白くてくちばしと足とが赤くて鴫ほどの大きさである鳥が、水の上をすいすい動き回りながら魚を食べる。 都では見かけない鳥であるので、みんな名を知らない。 船頭に尋ねたところ、 「これがあの都鳥だよ。」 と言うのを聞いて、 都という名を持っているというのなら、さあ、尋ねてみよう、都鳥よ。 私の恋しい人は都で無事でいるのかどうかと。 と詠んだところ、舟に乗っていた人は残らず泣いてしまった。 [第九段]
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