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玄関のドアが閉まり
……男は消えた。
幸子は、ほうっと息をついた。
そして……
昔のように秩序が戻った部屋を
満足げに見渡した。
男と共に消えた……
無秩序なガラクタたち。
男にとっては秩序があり
立派な存在意義のある
品々なのだろうが……
幸子にとっては
景色の悪い眺めでしかなく
日々苦々しく思っていた。
そう……
二人の仲が上手く
いっていた頃でさえ。
「はあ~、せいせいした!」
幸子は飼い猫に
そう話しかけながら
大きく伸びをすると
出かける支度を始めた。
身支度が済み、時計をし
指環を……
「あれ……?
どこへ置いたのかしら……」
もうかれこれ何年も
出かけるときには必ず
お守りのようにはめている
指環が見当たらないのだ。
幸子は決して
迷信深い人間ではないのだが
以前に一度指環をはめずに
出かけた際にそれはもう
散々な目にあった。
偶然だとは思っているのだが
また何かよからぬ事が
起きる気がして……
それ以来、指環をはめずに
外へ出たことは一度もない。
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