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幸子は必死で探した。
昨日の記憶を辿る。
「帰ってきて……
時計を外してここにおいて
その横に指環も……」
散々探したが結局……
指環は見つからなかった。
「おかしいわ?
外で失くすはずがない……」
足元に寝転んでる猫を見る。
「おまえはイタズラする
猫じゃないもんね!」
その呟きを
聞いたかどうかわからないが
猫は大きなあくびをする。
「まさか……あの男が……」
幸子の脳裏によぎる
あの男の忌々しい顔。
「そうだ。
きっと、あの男だわ……
あの男が持っていったんだ!
ああ、あたしは……
あの男に呪い殺される……」
幸子には……
指環がない=
「あの男が持っていった」
と短絡するのには訳がある。
幸子は思い出す。
あの男が得意げに
語っていたあの日の情景を……
「憎くて憎くて
どうしても赦せない相手を
自分で直接手を下さず
八つ裂きにしてやりたい!
と思ったことはないかい?
とびきりの苦痛を与えたい
破滅させてやりたい、と。
一撃では面白くないから
徐々に徐々に……
少しずつ、じわじわと……
自分が受けた苦しみを
思い知らせてやりたい
と願ったことはないかい?
……俺にはあるよ。
そして俺は実際に
天罰を下してやったんだ!」
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