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その時、携帯電話が鳴った。
「キャッ!」
幸子は思わず叫んだ。
携帯電話に恐
る恐る手を伸ばす。
ディスプレイには……
「非通知」の文字。
鳴るがままにまかせ
出ないでおこうかとも思ったが
着信音が鳴り続けるこの状態に
今は我慢が出来ない。
出ないで切ってしまったとして
のちのちずっと
気にかかるに違いない。
幸子は通話ボタンを押すと
ゆっくりと電話を耳に当てた。
「……もしもし……」
相手は無言だ。
「もしもし?」
相変わらず無言。
でも、切れる気配はない。
息遣いが
聞こえるような気もした。
幸子はさらに
電話の向こうの気配に
神経を集中した。
何かの音が聞こえる……
カラン、カラン
という乾いた音が……
幸子はさらに耳を澄ませた。
カラン、カラン……
なにかしら、この音は?
聞き覚えのあるこの音は……
幸子はハッとした。
これは……この音は……
氷がグラスに当たって鳴る音!
やっぱりあの男が……!
あの男が
あたしの指環を握り締めながら
酒のグラスを傾けつつ……
あたしの不幸を……
願い……切望し……
ニヤニヤしているんだわ!
これから儀式をするんだよ、と!
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