運命の地へ

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 〔ガタン、ガタン〕  「おい、ハンス、もうすぐ駅に着くぞ。」  私は、友人のフランツの声で目覚めた。 「あぁ、そうか…、装備をまとめないとな。」  すし詰め状態の列車から外を見ると、そこには一面の泥の世界が広がっていた。  やがて、列車が止まった。 「ハンス!! ボケッとしてないで、早く降りろよ!!」  フランツに押されるように降りた。 辺りは、とても静かで、ここが戦場だとはとても、思えなかった。 しかし、次の瞬間 この安易な考えは打ち砕かれた。 ある兵士が叫んだ。  「見ろ、ヤーボ(地上攻撃機の俗称)だぞ!!」   私が空を見上げると、巨大な機体がみるみる近づいてきた。 〔ドガガガガッ〕 すぐに、対空砲が火を吹いた。 しかし、敵機は怯むことなく迫ってくる。  「馬鹿野郎!!早く伏せろ!!死にたいのか??」  私は、誰かわからない兵士に突き倒された。 その時だった!!   〔ズコーン〕 私は、一瞬何が起こったのかわからなかった。 敵機が爆弾を投下したのだ。 先程まで、静寂だった駅の風景は一変した。 私は、初めて地獄を見た。 周りの兵士達は 「衛生兵!!衛生兵は居ないかぁ??」や「おいしっかりしろ!!」 悲鳴や怒号が飛びかっていた。 私は、起き上がり後ろを見ると、さっきまで乗っていた列車が跡形もなくなくなっていた。 「ハンス、大丈夫か?? ヤバかったな。」 フランツが言った。 「あぁ、ひどいなぁ…。」 私は震える手を押さえながら言った。 するとフランツが   「俺たち、とんでもない所に来ちまったなぁ。」 私が配属された地の名は……スモスク。 ここから、1年にもわたる従軍が始まった。image=74144661.jpg
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