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28th July 2014
東シナ海
尖閣諸島より南へ2kmの海上、日中の緊張状態はピークに達していた。彼はその上を飛行するヘリコプター、SH-60K ブラックホークのパイロットだった。
『こちら〈たんご〉CDC。フィッシャー01、02へ。中国は依然、我々に対する警告射撃を行っている。警戒せよ』
ヘッドホンから聞こえる、聞き慣れたヘリ母艦〈たんご〉のオペレーターの声。正面には船底を見せて海面を漂う民間の調査船〈かいよう〉。そのさらに向こうには中国の海洋警備艇と解放軍の駆逐艦が、日本の動向に睨みを利かせていた。
『汚ねぇ真似しやがって。クソが』
「落ち着けって。フィッシャー01より〈たんご〉CDC。ターゲットへ接近したい。援護射撃は可能か」
彼は毒づいた仲間をたしなめて、オペレーターとコンタクトする。
『ネガティブ、許可が下りない』
「了解」
そう言ってマイクスイッチを切る。
「早くしろよ、クソ石頭」
「落ち着いて下さいよ、隊長も」
毒づいた彼をたしなめるコパイロット。
「マイク切ってるからいいんだよ」
『こちら〈たんご〉CDC。海上幕僚長の独断により、警告射撃の許可が下りた。ターゲットへの接近を開始せよ』
ようやくか、と呟いて操縦捍を押し込んだ。
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