~懐古~

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思えばあれから、この町の野良者たちは変わった。 キュウも俺たちとの死闘の後、一丁目、二丁目の野良者たちをまとめあげ、なるべく争いごとが起きないよう気を払っている。 四丁目、五丁目の野良者もガン、ゼロのもと平和に暮らしていると風の噂で聞いている。 三丁目の俺たちはというと、相変わらずJ、トビ、ハカセの三匹とたまにアジトで顔を合わせながら自由な生活を送っている。 一つ変わったことと言えば、三丁目も最近野良者が増えてきたことだ。昔は三丁目と言えば、人間に飼われている言わばカタギの猫が多かった。 しかし、ここ数ヶ月は町でふらふらと歩いている首輪をしていない猫をよく見かける。 他の町からの流れ者か? それとも、繁殖期に増えた野良者同士の子か?どちらにせよ、アジトはまだまだ空きがある。一度公園にでも集めて、彼らの考えを聞かなければならないと思っていた。 『ギンさんがつくったこの町の絆は、俺たちが守らなきゃ!』 俺は自分の幸せだけに満足することなく、少しでも猫同士のコミュニケーションをとる時間も大事にしなければと思いながら歩みを進めていた。
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