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俺の胸騒ぎは優しい春風になでられたくらいでは振り払うことはできなかった。
とにかく、今まで平穏だった日常のどこかに何かヒビが入り始めているのは確かだ。
俺は迷いなく二丁目に向かった。
キュウなら何かに気が付いているかもしれない、そう思いながら道路脇を抜け、なるべく車が走らない道を選びながら二丁目へと俺は走った。
角を曲がったところにゴミ捨て場がある、懐かしき俺とトビ、ゼロが初めて乗り込んだ二丁目の集会場。
その近くにキュウのアジト、そしてギンの墓はある。
たどり着いた俺は挨拶も無しにキュウのアジトに駆け込んだ。
『ハルじゃねぇか、どうしたそんな大汗かいて』
キュウは相も変わらずの白い身体に不気味な真っ赤な染みこそ未だ持つものの、昔のような殺気は無くむしろ穏やかささえ感じる。
『キュウ、老けたな』
つい俺が口走った失言にも、キュウはニヤッと笑って返した。
『そんなこと言いにわざわざ三丁目から飛んできたわけじゃないだろう?どうした?』
俺は久しぶりの再会の余韻にひたる余裕もなく、最近感じている異変についてキュウに話し始めた。
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