~平穏~

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『野良者の様子がおかしいのはこっちも一緒だぜ』 キュウの口からは予想通りの答えが返ってきた。 キュウは二丁目を主に仕切り、野良者同士の争いごとがないように日に一度町内を歩いているらしい。 『最近な、みんな空を見上げて不安そうな顔をしてやがるんだ。いきなり神に祈るように手を合わすやつすらいるぜ』 キュウにはその行動の意味が全くわからず、ある野良者にたずねたらしい。その野良者のこたえは『天の怒り』がくる…とだけつぶやいたらしい。 『天の怒り?』 ハルにも何のことだかさっぱりわからなかった。しかし、思い返してみれば三丁目の野良者たちもみな不安そうに空を見上げていたのは事実だ。 『なぁ、キュウ何かよくないことでも起こるのかな?』 一気に押し寄せる不安にそう発した俺の頭をキュウは優しくボンとたたいた。その笑顔はまるでギンそのものだった。俺の心を芯から暖めてくれる笑顔だった。 『天…まぁ、いわば神様がしでかすことに俺たちはどうすることもできんよ。それよりも、何かあったときに大切なものをどう守るか、だろ?今のお前の辛気臭え面じゃ大事なもの何一つ守れやしねえぜ』 キュウに叱咤され、俺は目が覚めた。確かに何かの前触れは感じる、その何かがどうこうより、今は俺が守るべき存在の近くにいよう。俺はそう誓い、キュウのアジトを後にした。 さぁ、三丁目に帰ろう。
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