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「藤田くん」
藤田くん、藤田夜。
いずみせんせいの唇がわたしの名前を紡ぐ。
低い声。いずみせんせいの声。
二回目、三回目、四回目で顔を上げてあくびをかみ殺す真似。
せんせい、困った?怒ったかな?
わたしの名前はいずみせんせいの魔法で輝きを孕んで、世界一の名前になる。
大嫌いな名字も陰気くさい名前も最高の意味を持つ。それが、いずみせんせいの魔法。
わたしはせんせいがだいすきだ。
いずみせんせいを思うと、こころがあったかくなって、せかいに春が来る。
それも魔法。せんせいの、魔法。
目を開けると想像通り、わたしの前には切れ長の目を更に細めたいずみせんせいが立っていた。
グレーの細身のスーツが長身のいずみせんせいによく似合っている。
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