なんでも屋と情報屋

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  あれから数十分後、寝巻きから普段着に着替えた悠希は、啓太の作ってくれたホットケーキをつつきながら新聞を読んでいた。いつも啓太に注意されるが、懲りずにまたやる。 店を開業してから一ヶ月、今だにまともな依頼が来た事はない。二週間前に猫探しをしただけである。 まだまだ知名度の低いこの店は、建っている場所が悪い事もあって客どころか人間さえも滅多に来ないのだ。来たとしても、大抵はすぐに帰っていく。 このままでは、この店は大赤字になること間違いなしだ。 「…チッ…暇だな……」 「何が?」 着けているエプロンを外しながら啓太が首を傾げる。朝食作りはもっぱら彼の仕事だ。 ひとまず新聞を畳んで机の上に置くと、悠希は暗い面持ちで答えた。 「暇だよ、暇。依頼が来なくて暇なんだ」 「あぁ、成る程ね」 「開業してもう一ヶ月だぜ?来た依頼と言えば、情報屋が持ってきたペットの猫探し一件だけだ」 「そうだね。いっそ、僕らから依頼を探しに行くかい?」 「……想像してたら悲しくなってきた」 仮にも店主である自分が、依頼を求めて自分から探しに行くなんて、あまりにも間抜け過ぎではなかろうか。その姿を想像して、ガックリと肩を落とす。 啓太もそうだね、と頷きながら苦笑を向けてくる。 「でも、このままだと大した事もしないで潰れるよ、この店」 「………だよなぁ。情報屋がいつ来るかも分からないし」 情報屋とは、その名の通り情報を取り扱っている。 だが情報屋とは店の名前ではない。情報通であると有名なとある女性の事を皆がこう呼ぶのだ。この女性がまた一癖も二癖もあるのだが、それはまた後で説明しよう。 とにかく、その情報屋はお金と引き換えに情報やら依頼やらをくれるため、駆け出しのなんでも屋にとってはまさに救いの女神なのだ。 「でも、あの人結構面白かったよね」 「あれは面白いんじゃない。可笑しいんだ、頭がな」 「それを言うなら、存在自体が可笑しいんじゃない?」 一瞬、自分達の周りの空気が下がったような気がした。時々だが、啓太はかなりの毒舌を発揮する。普段口が悪い自分よりも酷い。 気を取り直してホットケーキを口に運ぶ。  
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