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「ん……旨い」
「それはどうも。でも家計が厳しいから、しばらく朝食はホットケーキだからね」
「お前はオカンかっ」
文句を言いながらもホットケーキを口に運ぶあたり、どうやらお気に召しているようだ。あっという間にホットケーキは消えていく。
食べ終わったのを見計らった頃に、啓太が皿を下げた。これから皿洗いでもするのだろう。炊事、洗濯等は全て啓太に任せてある。
この間啓太が熱を出した時、代わりに自分がそれらを引き受けた事があったのだが、悲惨な結果となったので啓太に禁止令を出されてしまった。
「今まで家事なんてやった事もねーしな…」
「ニャア~」
「んー?」
足元に何かフワフワと温かい物体が擦り寄って来た。
視線を向けるとそこには、グレーの毛並みと緑の瞳を持つロシアンブルーという種類の猫がいた。
「レイズ、どーしたんだ?」
「ニャオ」
この猫の名はレイズ。なんでも屋の看板猫であり、啓太の飼い猫である。なぜか飼い主である啓太よりも悠希に懐いているのだ。
レイズは口にねこじゃらしをくわえていた。遊んで欲しいらしい。
やれやれ、とため息をついた後、悠希はねこじゃらしを受け取って左右に振り始めた。その動きに合わせてレイズの顔が小さく左右に振れる。
しばらくすると、じゃれついて来た。
「……あれ?レイズと遊んでるの?」
「おー。皿洗いは終わったのか」
「とっくにね。それよりも、今日は食料を買い出しに行くから悠希もついて来てね」
「はぁ!?」
思わずガタッと椅子から立ち上がると、その音に驚いたレイズはピュ~っと他の部屋へと逃げて行った。その姿が見えない程に速く。
だが啓太は平然としながら買い物袋を悠希に渡す。
「君と一緒に行くと、商店街の人達が安くしてくれるんだよ。……大赤字…」
「ぐっ……」
それを言われると何も言えなくなってしまう。あくまでも啓太は店の助手であって、責任は店主である自分にあるのだから。
こう言われてしまったら、言うことを聞くしかないではないか。
「分かったよ……ついて行けばいーんだろ?ついて行けば!」
「じゃあ行こうか。まずは夕飯の材料を買いに行こう」
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