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「今日の夕飯、何?」
「ハンバーグかな。玉ねぎとパン粉と卵はあるし、ひき肉を買えば良いだけだから」
どうやら冷蔵庫の中身は常に把握しているようだ。この店の助手になってから、以前よりもオカン度が増した気がする。否、絶対そうだ。
啓太は幼稚園からの腐れ縁で中学までずっと共にいた。だからお互いの事はほとんど知りつくしている。
中学卒業と共になんでも屋を一人で開業しようとした時に、啓太はなぜか希望していた高校の合格を蹴ってなんでも屋の助手として来てくれたのだ。あの時はかなり驚き、そして申し訳なく思ったりした。
でも、啓太は気にするな、と言ったのだ。これは自分の意思だから、と。
それに、こちらとしても啓太がいてくれなかったら今頃は野垂れ死んでいただろうから、ありがたいとも思っている。
オカン度から派生してなぜかなんでも屋開業の時を思い出してしまった。そのため、無意識に足を止めていたらしい。先を歩いていた啓太が不思議そうな顔をしていた。
「悠希、行かないのかい?」
「--ぅえ!?あー、行くって」
「そう、なら良いけど。レイズ、留守番頼むよ」
「ニャアっ」
レイズは言葉が分かったかのように一言鳴いたのだった。
「おっ、悠希ちゃん!今日も可愛いねぇ~」
「そ、そうかな……」
「ほら、お菓子持っていきなっ」
「ありがと……」
「ひき肉かい?んなもんタダにしてやるよっ」
「あー……どうも」
今現在、悠希は商店街の人達の注目を浴びていた。始めは愛想よく受け答えしていたのだが、段々と精神的ダメージが蓄積していき、今では適当に受け流している。
そして悠希を引っ張り出してきた張本人はと言うと……
「300円のひき肉がタダか。計算通り……いや、それ以上だな」
「てんめぇ~……悠長に構えやがって、俺の身にもなれっ」
がぅっと怒鳴った悠希だが、啓太はびくともしない。それどころかニヤリと怪しげな笑みを浮かべてそっと耳打ちした。
「駄目だよ、そんな大声出しちゃ。君が男だってばれるよ?」
「~っ……」
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