2人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
昼下がりの柔らかい日差しが世界を彩っている。
こんな日にはうららか、という言葉がよく似合うことだろう。
薄暗い部屋の窓辺に椅子を置き、そこに腰掛けて窓の外を眺めていた少女はそう思った。
きっと暖かいであろう風に吹かれ、庭に植えられた木々の葉が擦れる。
少女、ライラは艶やかな黒髪を揺らし、窓に手を掛けて深く息をついた。
憂鬱げに目を伏せ、薄紅色のワンピースから伸びているほっそりとした白い腕を動かし、窓枠をゆっくりと指先でなぞる。
その彼女の背後には、うず高く積まれた本の山があった。
否、それだけではない。
決して広くはないその部屋の所々に、また別の本の山があり、床に散乱しているものも多い。
新しく買い与えられたものから、物心ついた頃から読みふけっているもの。
色褪せたものや彩り豊かなものまで皆、彼女の数少ない気分転換だった。
「退屈」
しかしそれらも、彼女を満足させることが出来なくなってしまった。
ライラが望むのは外の世界。
そして、自由。
彼女の所有者である父のイグアスに、召使がその旨を告げれば、彼は喜んで部屋に窓を取り付けた。
それがかえって、ライラを苦しませることになる。
憧れのものを目の前にして、さぞかし辛そうに彼女は眉を顰め、日がな一日窓にかじりついては庭の様子を眺めるようになった。
最初のコメントを投稿しよう!