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 昼下がりの柔らかい日差しが世界を彩っている。  こんな日にはうららか、という言葉がよく似合うことだろう。  薄暗い部屋の窓辺に椅子を置き、そこに腰掛けて窓の外を眺めていた少女はそう思った。  きっと暖かいであろう風に吹かれ、庭に植えられた木々の葉が擦れる。  少女、ライラは艶やかな黒髪を揺らし、窓に手を掛けて深く息をついた。  憂鬱げに目を伏せ、薄紅色のワンピースから伸びているほっそりとした白い腕を動かし、窓枠をゆっくりと指先でなぞる。  その彼女の背後には、うず高く積まれた本の山があった。  否、それだけではない。  決して広くはないその部屋の所々に、また別の本の山があり、床に散乱しているものも多い。  新しく買い与えられたものから、物心ついた頃から読みふけっているもの。  色褪せたものや彩り豊かなものまで皆、彼女の数少ない気分転換だった。 「退屈」  しかしそれらも、彼女を満足させることが出来なくなってしまった。  ライラが望むのは外の世界。  そして、自由。  彼女の所有者である父のイグアスに、召使がその旨を告げれば、彼は喜んで部屋に窓を取り付けた。  それがかえって、ライラを苦しませることになる。  憧れのものを目の前にして、さぞかし辛そうに彼女は眉を顰め、日がな一日窓にかじりついては庭の様子を眺めるようになった。
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