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重苦しいその沈黙に不快げに顔を顰めたライラは、詰まる息をゆっくり吐き出しつつ安楽椅子に座り込み、リラとワードの顔を交互に見る。
「どうした?」
状況の理解に苦しんだライラが耐え切れず問い掛けた。
「いえ、何も」
先に首を横に振ったのはワードだ。
続いてリラもワードに準じて、首を横に振る。
意味深なやり取りに、ライラの胸中に再び疑惑がはびこった。
「換えのお花もお持ち致しますね」
まだ弱っていない深紅の花束を抱え、ワードは目立たない小さな戸に手を掛ける。
屋敷の主人が出入りする、洒落た作りの赤金色の扉とは別の戸だ。
彼ら使用人は、ここを潜ってライラの世話をしにやって来る。
「わたくしもすぐに参ります」
そう言ってライラに一礼したリラも、ワードの後を追うように部屋から出て行った。
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