くるりら

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面白い。 別に恋心を弄ぶつもりなんて欠片も、いや欠片はあるけど、そんなにはない。 でも、こう面白いと、ねぇ。 『昨日はきつかった?』 「わかんない。こんな時間まで寝てたからそうなんじゃない?」 『わかんないって……。自分の体だよ?』 「自分の体だから全部わかるわけじゃ」 ――――コンコン 「ん?」 ドアをノックする音。 はて、今日は我が家には自分しかいない筈なのだが。 『どうしたの?』 電話先の彼女が来た、なんてことは当然ない。耳に当てたケータイから車の騒音が聞こえるし。 誰だろ。 ――――コンコン またノック。幻聴という可能性はたった今消え去りましたとさ。 よいしょ。布団で物理的に重い腰を上げる。 ガチャっとな。 「おはようございます先輩!」 「人違いです」 バタンとな。 『……どうしたの?』 「幻覚が、ちょっとね」 『幻覚……?』 「なんかセミロングの黒髪した可愛い娘がおはようって」 『……?』 まぁそうなるよね。 ――――コンコン。 またノック。五月蝿いな。人違いだよ。先輩って誰だよ。僕か。 ガチャっとな。 「おはようございます先輩!」 「多分、先輩違いです」 バタンとな。
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