罪の遺産

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「おいっ 嘘だろ?」 身体を起こしてやると 土方はちからなくのけ反った 首筋に手をあてるが 脈打つ音が聞こえない 土方は死んでいた 死体 さっきまでは心地のいいもの 今は肉の塊 死体 さっきまではよりどころ 今は肉の塊 死体 さっきまでは自分を受け入れてくれたもの 今は肉の塊 事実を受け入れたくなくて俺は叫んだ 精神が音をたてて崩壊するのが聞こえた 「あはっ…ハハハ」 俺は笑っていた あいつのような笑いではなくもっと汚い笑い 俺は泣きながら笑っていた その笑いは遅すぎる助けが来てもなお 止めることがなく 一生分の笑いを使いきってしまったんだ そして後日 俺は懐かしい名で世間を震撼させた 白夜叉再来 白夜叉は容赦なく幕府の連中を斬り 噂は江戸中に広まった 白夜叉はいつも手が赤い色に染まっている それを見たら 誰だろうと斬られる 白夜叉は 恋人の姿を 探し続ける 生きた怨霊だと
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