銀色 閑話集

彼岸花

目の前に赤いものが差し出された

｢何 これ？｣

｢お前にやるよ｣

それは赤い彼岸花だった

俺の恋人は変わっている
今日だって 偶然会ったと思ったら突然
彼岸花を差し出された

｢まあ 貰うけどさ なんでくれたの？｣

｢お前に似合うと思ったんだよ この雑草｣

土方は彼岸花を指差した

｢雑草って
彼岸花は立派な花ですー｣

ばか野郎 もっかい寺子屋からやり直せ
とはさすがに言わない
逆手を取られて馬鹿にされそうだからだ

｢この花が嫌いだからお前にやる｣

｢お前は嫌いなものを人にやるのか？｣

花と言い直したけれど
人に嫌いなものをやるってどういう神経してんだよ

少しだけ苛ついていると
土方は俺の手の中にある花を見て僅かに口角を上げた

…何 笑ってんだよ 恥ずかしい