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「ちょっと!不知火!」
「言ったろ?お前には、こっちの方が似合ってるって。」
結い上げていた髪がさらりとおちる。
その髪を手に掬い、感触を楽しんでいる不知火に、やめろ、と正座をしたまま、上半身だけ振り返ると、不知火がまっすぐな瞳を向け、そのまま、顔を近づけ、侑が、後ろに仰け反ったのを見逃さず、そのまま、押し倒す。
侑のサラサラの黒く長い髪が畳に広がる。
その上に、一つに束ねた不知火の蒼い髪が、不知火の右肩から零れ落ち、侑の髪に重なる。
唇は触れていない。
でも、近い・・・・・・。
鼻先が触れそうな距離で不知火が見つめてくる。
不知火の赤い瞳と侑の青い瞳が重なる。
不知火はいつもの挑戦的な笑みは浮かべていない。
ただ、まっすぐに私を見つめている。
侑は、それに耐えられなくなり、目を逸らしながら、掴まれている左手ではなく、開いている右手で、不知火の肩を押し返す。
「い、いつまで、そうしているつもりだ・・・・・・。」
「目を逸らすな。俺を見ろ。それに、そんな弱い抵抗で、俺を押し退けられるとでも思っているのか?」
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