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原田は、こんな近くに、肩が軽く触れ合う事ができる距離に居るのに、侑のことを遠くに感じた。
侑が辛そうにしているとき、遠い目をしているときによくそう感じる。
そして、今も・・・・・・。
拒絶の色は入隊当初から、薄れてきたが、最近、自分に対して、その色が濃くなってきているように感じていた。
そして、いつか、儚い雪のように消えてしまいそうな気もしていて、さらに目が離せなくなっていた。
そのとき、侑が、取りの近くに行こうとして立ち上がったとき、原田は、侑が消えそうに見えて侑の手首を掴んで、抱き寄せた。
そして、その体をぎゅっと抱きしめる。
自分の腕が、侑の体をすり抜けてしまいそうな気がして、なんだか、胸の内が切なくなった。
侑は、最初何が起きたのか分からなかった。
鳥に近寄っていこうと思って立ち上がったはずなのに、その直後、暖かいものに包まれた。
それが、原田だとわかると、恥ずかしくなって、その腕からすり抜けようとする。
でも、原田の腕は、自分を抱きしめたまま、放してくれない。
すり抜けようとしているのを感じると、その腕は、さらに力が籠められ、動けないほど、抱きしめられた。
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