253人が本棚に入れています
本棚に追加
終
終わり
END
おわり
fin
…………
本のラストシーンのページを何度も読み直す。
文章は頭に入れない。
文字の連なりを、目に入れるだけ。
この本を読むのはこれでもう数えきれないくらいだ。
序章の部分なんかはそらで言えるくらい。
手垢で汚れた本は、カバーなど既に紛失している。
丸裸の白い装丁の本には、タイトルが書かれていない。
あまり著名でない作家の自費出版なのだろうか。
小さい頃からずっと読んで来た本。初めて読んだ本。
年齢を重ねるごとに物語の深みを感じる事ができる。
内容は、澄んでいながら少し歪んだ恋の話。
フィクションであるにも関わらず、登場人物の恋人たちはまるで実在しているかのようにいきいきと動いている。
柔らかい文体と流麗なセリフはページをめくる度に引き込まれる。
こんな恋に、憧れた。
最初のコメントを投稿しよう!