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●ごノ話
その日、四時間目は体育だった。
「にゃははは~、楽しかったねぇ~」
雨上がりのベチャベチャのグラウンドを亜理亜と走りながら、千影は幸せそうに笑う。
「楽しそうだったね。私、見てたよ」
とはいえ、亜理亜に見えたのはそのごく一部だろう。
もやけた千影とシュバシュバ動き回るエンジュ。
時折見える千影の表情は終始笑みだったが。
「もうちょっと時間あったら危なかったかな。」
エンジュが千影に触れた瞬間、チャイムが鳴り響いた。
判断は誰にもできず、結局引き分けということになった。
「またやろうね、千影ちゃん」
「うんっ!」
かろうじて僅かに乾いたグラウンドの外周を選んで走る。
普通の学校なら授業時間中走り回る、なんてのは無茶があるし生徒から文句も出そうだが、この学校では別だ。
誰も彼もが平気な顔をして走り続けている。
「・・・」
そんな中、エンジュはジッと千影を見つめる。
「・・・」
そんな視線に気付いているのは、千影の隣を走る亜理亜。
チラッと後ろに視線を向ける。
お昼前の最終授業。
空腹マラソンはまだまだ続く。
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