第五話

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●ごノ話 その日、四時間目は体育だった。 「にゃははは~、楽しかったねぇ~」 雨上がりのベチャベチャのグラウンドを亜理亜と走りながら、千影は幸せそうに笑う。 「楽しそうだったね。私、見てたよ」 とはいえ、亜理亜に見えたのはそのごく一部だろう。 もやけた千影とシュバシュバ動き回るエンジュ。 時折見える千影の表情は終始笑みだったが。 「もうちょっと時間あったら危なかったかな。」 エンジュが千影に触れた瞬間、チャイムが鳴り響いた。 判断は誰にもできず、結局引き分けということになった。 「またやろうね、千影ちゃん」 「うんっ!」 かろうじて僅かに乾いたグラウンドの外周を選んで走る。 普通の学校なら授業時間中走り回る、なんてのは無茶があるし生徒から文句も出そうだが、この学校では別だ。 誰も彼もが平気な顔をして走り続けている。 「・・・」 そんな中、エンジュはジッと千影を見つめる。 「・・・」 そんな視線に気付いているのは、千影の隣を走る亜理亜。 チラッと後ろに視線を向ける。 お昼前の最終授業。 空腹マラソンはまだまだ続く。
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