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帰りの途中でこんな会話があった。
「ねぇ、龍?」
「……ん?」
「どうしてアイツは“ヴァンパイア”なんて呼ばれてんの?」
「……そうだな。……異様に高い戦闘能力。……そして、相手の返り血を浴びた姿を見た奴がそういってるんだろうな」
「ただの悪魔じゃん」
人のことをどうこう言ってんじゃねェよ。
ってか、何だよ、戦闘能力って。
「凪、そんなこと言っちゃダメだよ。裕人君は悪魔なんかじゃない」
だからと言って、こんなことを言う奴もいねェと思うけど。
「うぅ……。でも、そうじゃん」
「違う」
「でm」
「違う」
「「違う」
「何か一言くらい言わせてよ!!」
どうでもいい言い合いが続いていた。
ふと思った。
音原は俺のことを悪魔だと言った。それは正しい考えだと思う。
悠莉が思ってるような人間じゃない。
悠莉の中の俺と、本当の俺は違うはずだ。
一方的に悠莉を拒否し続ければ、悠莉は自然と離れていってくれるのだろうか?
……それがいい。そうでなくちゃいけない。
でも、そうであってほしくないという思いが心の奥で引っ掛かっている。
「……クソッたれが」
「え?」
「何でもねェよ」
その『クソッたれ』が一体誰に向けて言ったのかは、俺にも分からなかった。
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