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街から少し外れ、静かな空気が流れている商店街に一軒だけ営業しているBarがあった。
派手すぎず質素すぎないネオンの色合いが、その商店街をほんの少しだけ明るく染めている。
Barの名前は『Heven's』
名前の由来はBarのマスターがお客を天にも昇るような気分にさせるかららしい。
「で、また喧嘩したってか?お前が怪我させた奴がどこに行くかわかる?」
「天国?…いでっ!!」
蜜柑の頭を叩いたのは、彼の幼なじみ。
名前は那智 林檎(なち りんご)
髪は長髪で黒く、後ろで束ねていて、モデル並みに身長が高く細身。
すれ違えば誰でも振り向いてしまう程の整った顔立ちの持ち主である。
外科医を目指す医大生で、頭脳明晰、容姿端麗と完璧と思わせるが短気でよく蜜柑と喧嘩をしていた。
「怪我した奴は病院にいくんだよ、ったく!今までうちの大学病院に何人蜜柑の犠牲者が来たことか…」
スカイブルーの色をしたカクテルを飲みながらため息をついた。
「いいじゃん、林檎が将来偉ぁいお医者様になるために勉強材料を納品してあげてるのさ。」
キシシっと笑う蜜柑を見てまた頭をひっぱたいた。
「ほら、林檎くん。あんまり蜜柑くんの頭を叩くと余計に頭が悪くなりますよ。」
「マスターいいんだ、こいつはこれ以上叩いても死ぬ脳細胞がない!」
「ひでぇな、おい」
Bar『Heven's』のマスターとは二人ともかなり親しく、ここを二人の集合場所にしているのは二年ほど前からである。
気さくで優しく、いつも笑顔のマスターに二人は信頼も寄せていた。
以前二人が店内で喧嘩を始めた時、マスターが笑顔でぺティナイフを投げてきた事がある。
林檎も蜜柑も得体の知れない恐怖に一歩も動けなかったとか。
「なぁマスター…なんか面白い話してくれよ。」
蜜柑は煙草に火を付け、フゥと天井に向かって煙をはいた。
煙越しにマスターは、微笑みながら磨いていたグラスを置いた。
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