時の歯車

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暗くてよく見えないが、多分黒い犬だろう。不良達に蹴られ、踏まれ、動くことも許されないでいる。 林檎は特に正義感が強いわけでもないが、多勢に無勢や、無防備な者、弱いものが一方的にやられているのが根本的に嫌いな性格だった。 黒いソレが犬だと気付いてしまった瞬間、身を隠す事を止め立ち上がった。 不良達は犬に夢中で林檎に気付いてはいない。 五人。いつもなら勝率がない時はいかないが、こういった場面では勝率云々ではない。ただそういうことをする人種をぶっ潰したいという強い怒りを全面に出し、駆け出した。 足音に気付いた不良の一人が林檎の方を向いたと同時に、肘鉄が顔にめり込んだ。 何が起きたか理解の追い付かない不良達が戸惑うなか、林檎は二人目の鳩尾に思い切り膝げりをかました。 二人が崩れ落ちる中、ようやく仲間が誰かにやられていることに気付いた三人は林檎を囲んだ。 「てめぇなにしてくれてんだ!」 怒鳴った不良の方に目を向け、素早く裏げりで相手の急所を貫いた。 怒鳴り声を上げた不良は白目を向いて泡を吹きながら後ろへ倒れた。 「なにしてんだって?お前らみたいな人間が嫌いだからやっただけだ。」 林檎は残りの二人を見て、微かに口角を上げてニヤリと笑った。
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