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今から数百年前、人類により科学技術の発展が急速に進んでいた。
科学者たちは競い、己の知識を振り絞り、日夜研究に明け暮れていった。
メリットにデメリットはつきもの。その言葉の通り、科学の進歩により快適な生活をおくれるようになった反面、物質的な種々の被害や自然環境の破壊。様々な問題が浮上した。
しかし、人々はそれから目を背け、多々ある公害をも顧みず、己の欲を満たすため、地位や名声のため、他人の役に立つため、ただひたすらに科学技術を求めた。
そしてある日、一人の学者はついに人類のタブー、侵してはならぬ禁忌とされていた"神の契約"に手を出してしまう。そして――――
「神々の天罰」と呼ばれる大規模の自然災害が起きた。
▼
――ユラリ。彼女の影が踊る。
カーテンを閉め、外からの光を一切遮断した部屋の中、唯一の光源となるキャンドルを前に彼女はカウンター席に腰掛けていた。
ショートカットの艶やかな黒髪に色白な肌。細身の、しかし出るところは出たバランスの良い体つき。整った顔だちに目元の泣き黒子とヒョウ柄の獣耳と尻尾が印象的な大人な雰囲気をもつ獣人の女性だった。
キャンドルに照らしだされた彼女は、頬をほんのりと紅く染め、妖艶な微笑を保っている。キャンドルに吐息が掛かり、頼りなく炎が揺れる。ユラリ。再び大きく揺れた。
「よーするに、人類の力では自然の力に到底及ばないってことよ。」
―――フ。表情が一変。口角を釣り上げ、まるであざけ笑うかのように言い放ち、そして、そのまま灯りの横にあるグラスに手を伸ばす。 グラスに口をつける姿は、見ている方が顔を赤くしてしまうのでは、と思えるほど大人の色気を醸しだしていた。再び、微笑へと表情を戻し、
「なぜ人は、愛に羨望し、魅了されてしまうのか」
誰に言うわけでもなく、言葉をただ落としていく。
「なぜ人は欲深くなるのか」
「なぜ人は変わってしまうのか」
「なぜ人は己の過ちを認めようとしないのか」
「なぜ人は―――――永遠を、求めたのか」
▼
「・・・んっ・・・・ぬぅ・・・」
不意に、うめき声があがる。
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