あいしてる

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愛してる そんな声が聞こえた すんだ空気のように透明で 聞いたことのあるような ずっと聞いていた気がするような 柔らかい慈しみを秘めた声 愛してる、愛してる 優しくて わたしを包んでる 春の花の匂いは 絹みたいな柔らかいカーテン いつも通る道に好きな花の匂いがする場所は 四つある 雨の日も そこを通れば気分が晴れる 百合のような でも優しくて甘くてまぁるい匂い 好きな沈丁花が咲くにはまだ早いから 何の花の匂いかは知らないけれど あなたの声を思い出す いつもそばにいるあなたの 愛してる、とささやく声 コブシの花がつぼみをつけました わたしの好きな桃はまだ見れてません それでも 花という繊細ながらも強かな存在を見るとあなたの声が聞こえる 愛してる その言葉に慈しみも、誰かの母が子に見せる愛も、全てが見えた
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