プロローグ

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 川のほとりで、少女は釣りをしていた。 「ふんふんふーーん♪ 今日はおっきいお魚釣るぞーー! そしてみんなを驚かせてやる!」  彼女の傍(カタワ)らには無数の空き缶。別プレイヤーが投棄したものだろう。  少女が釣りをして巨大魚が釣れた形跡は一度もない。例え雑魚でも二、三匹というくらいの恐るべき釣りの才能の無さだ。 「全く……みんな迷子になっちゃって、かわいー! しっかりしてるのは私だけだね!」  今まで少女を照らしていた日光が……何かの陰により遮られた。 「………………ん?」  少女が顔を上げると……そこにはピラニアを巨大化したような魚が川から飛び跳ねて、少女に落下しようとしていた。  巨大魚は少女を食らわんとばかりに口を大きく広げる。 「も、も、も、」  少女は驚きのあまり口をあんぐりと開けて硬直した。 「モンスターだあぁぁああ!!!」  持っていた釣り竿を抱え、一目散に駆け出した。  まさか陸地を飛び跳ねてきたりしないよねー……と思って振り返ると、そこには空中を泳ぐ先程の巨大魚の姿が。 「なんでぇ~~!?」 ここは『CROSS×FANTASY』。 身体がネットの中に入り込める新感覚オンラインゲームだ。 そんなゲームに誰もが虜になった。 そして、この少女も……。
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