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「あれ? 萩原。今、変な女いなかった?」
「ん? さあ。お前の得意の妄想っしょ」
僕は何気ない友人の無礼な態度にいらつく。確かに僕には四十七人の脳内彼女がいるが、3Dな彼女は一人もいない……あれ? ごめん。ちょっと泣けてきた。
そもそものそもそも、もそもそと独り喋り狂う萩原に下界の声など届かないのだ。
「そんなことよりさ。明日部長に紹介するから放課後空けといてくれよな。兎に角、凄い人なんだ」
大して話など聞いちゃいなかったが、先程から部長部長部長部長と百八回は、部長という名詞を連呼している。完全に洗脳されてるな、こいつ。
萩原の宗教じみた、執拗でこってり濃厚な勧誘に嫌気がさし、早々と煙草屋のT字路を右へ。いざ西へ。
僕は振り返りもせず、じゃあな、と萩原に手を振る。グッバイまた明日。
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