~第二章~

2/9
前へ
/26ページ
次へ
街にわずかばかりの余韻を残して、闇は音もなく降りてくる。  彼方に見える飛行機のエンジン音や、電線に止まって鳴くカラスの声。その全てが寂寥感をもたらして、ひとりでに去っていく。  切り取られた空間のように人々の喧騒は止み、洗脳でもされたかのように家を目指して、散り散りになる人々。  一人取り残された僕はというと、(なんとなく大多数に甘んじて家に帰ることが癪だったので)本でも物色してから帰ろうと、近くのコンビニへと足を運んだ。 「いらっしゃいませー」  自動ドアをくぐると、あの“語尾が上ずるイントネーション”でもって、店員がすれ違いざまに声をかける。  これといって深い意味はないのだろうが、僕はどうもこの独特の調子に違和感を感じていた。  恐らくテンション的な何かだろうと割り切りながら、買うわけでもなく新商品を探して弁当、カップ麺、飲み物、そして書籍、アイスと、とりあえず店内を一周する。  時間帯もあってかコンビニの中は整然としていた。  客もまばらで、レジ前で主婦があーだこーだと難癖をつけていること以外は、だいたいいつもと変わらなかった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加