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街にわずかばかりの余韻を残して、闇は音もなく降りてくる。
彼方に見える飛行機のエンジン音や、電線に止まって鳴くカラスの声。その全てが寂寥感をもたらして、ひとりでに去っていく。
切り取られた空間のように人々の喧騒は止み、洗脳でもされたかのように家を目指して、散り散りになる人々。
一人取り残された僕はというと、(なんとなく大多数に甘んじて家に帰ることが癪だったので)本でも物色してから帰ろうと、近くのコンビニへと足を運んだ。
「いらっしゃいませー」
自動ドアをくぐると、あの“語尾が上ずるイントネーション”でもって、店員がすれ違いざまに声をかける。
これといって深い意味はないのだろうが、僕はどうもこの独特の調子に違和感を感じていた。
恐らくテンション的な何かだろうと割り切りながら、買うわけでもなく新商品を探して弁当、カップ麺、飲み物、そして書籍、アイスと、とりあえず店内を一周する。
時間帯もあってかコンビニの中は整然としていた。
客もまばらで、レジ前で主婦があーだこーだと難癖をつけていること以外は、だいたいいつもと変わらなかった。
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