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「さて、これからどーしよっかな……」
ぽっかりと開いたビルの隙間から、お月様が顔を覗かせていた。辺りは暗闇に彩られ、人っ子一人いない。
まぁ、あたしにしとっては別に構わないんですけど。むしろ一人のほうが気が楽なんですけど。
あたしと、あたしの相棒の影法師が高く伸び、それがやけに重かった。
「ねぇ相棒、あんたはどう思う」
語りかけてからつい笑っちゃだってあれだもの、絶対に話さない相棒──原付に話しかけるとかマジ重症でしょ? って誰も答えないか。
砕け散ったアスファルトを踏みしめて、動かない相棒を押していく。てか今は相棒よりかお荷物じゃん。マジでこれ運ぶ男手が欲しいんですけど。
足を止めて、さっきから付きまとう眩しい月を見上げた。
やりたいことも学校も全てほっぽりだして、風任せにした無気力なあたし。
でもこれだけ成し遂げたかったんだよねぇ──バカみたいでしょ、20手前の女が旅とか。さんざん止めとけって言われたけど、あたしは思ったの。
あたしは何がやりたいのか──何を叶えたいのかってね。
「さて、これからどーしよっかな……」
とりあえず相棒に飯でも食わせますか。
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