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まだ頭がぼんやりしてるが、状況を飲み込むにつれてサーッと血の気が引いていく。少なくとも大学ではないことは確かだ。
「ここ……どこよ……?」
しぼり出した掠れ声は霞みと共に消えた。
果てしなく広がる深く、黒い闇。
気を抜けば吸い込まれそうなほど惹かれてしまう黒一色。
明かりは一切ないのに、自分の姿だけははっきりと浮かび上がっている。
とにかくここにジッとしていても埒があかない。こういう時はテキトーに歩けばいいんだ! と勝手に自己完結した少女が足を踏み出そうとしたとき、
「お、目が覚めたか?」
突然かけられた声に、とっさに身構える。
「まぁそんなに固くなるな。美人さんが台無しだぞ」
「誰っ!?」
怖い。とても怖い。
「あぁ、今そっちにいく」
コツンコツンコツンと床を叩く靴音がして、闇を掻き分けておっさんがやってきた。
ガードレールに腰をかけていたあのおっさんだ。
恐怖なんてどこかに消えた。
少女はツカツカと歩み寄り、
「死ねぇぇぇぇぇっ!」
おっさんの鼻っ面をグーで殴った。
問答無用の一撃だった。
豪快に鼻から血を吹き出し、おっさんは闇の向こうへとぶっ飛ばされた。
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