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さっさと仕事を済ませて帰ろうという気持ちが高まり、さゆみから目線を外して歩きだした。
追って、肩を並べて歩くさゆみは特になにも言ってこなかった。
二人が歩いている場所は少し木々が多い山。森というほど密集してはいないが、道は太陽の光を遮って陰で覆われている。
普段は人気(ひとけ)のない散歩やジョギングコースとして使われているのだが、今は訳あって立ち入り禁止となっている。
看板とロープで塞がれているにも関わらず、なんの躊躇いもなくロープを踏み越えて奥へと進む。
「ねぇ海斗。アンタの趣味とかって何?」
数分進んだ辺りでさゆみが話しかけてきたが、答える義務はないと表すように無視して歩き続けた。
「私はアニメとかマンガとゲームだな。結構な深く突っ込んでるわよ」
「……」
これも無視。
「なんか答えなさいよっ!」
「っだぁっ!?」
結果、見事な右回し蹴りが海斗の腰にクリーンヒットし、悲痛の声をあげる羽目になった。
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