安物の私達

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「何してるんだ、俺」  ベンチに腰掛けていた海斗はボヤき、左手首に巻いていた腕時計に目をやる。  九時五十五分。指定された時間の五分前だが、海斗を誘った張本人はまだ現れる気配がまったくなかった。  第一、何故こんなことに付き合っているのかすら海斗自身わからない。 『あ、明日の十時ちょうどに駅前広場の時計の下で待ち合わせ! それじゃ!』  と、昨日出会った足癖の悪い女に言われて今に至る。  ここで海斗は気付く。 「……番号やメルアド交換してないから連絡とれないということは、別に帰ってもバレないな。うん。帰るか」 「既にバレてるわよ」  立ち上がった時、横にさゆみがいたことに海斗は小さく舌打ちした。
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