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海斗は自転車を漕ぎ続ける。最初は座っていたがスピードに物足りなさを感じ、立ち漕ぎして自転車の速度を上げていく。
桜の花びらで敷かれた道を通り過ぎ、駅前への道ではなく、郊外へと通じている道に曲がった。
時間は夕方前。学生ならば放課後の時間帯。いつもの海斗なら駅前へ一人で出向き、本屋やゲームセンターなどで時間を潰しているのだが、今日は違う。
ある仕事を頼まれた。それも急に。
いつもは一人で行うのだが、今回は人がつくことになっているらしい。海斗本人は嫌がったが、担当からの連絡では仕方がない。
別に待たせまいと思って急いでいる訳ではない。早く終わらせたいと思って急いでいるのだ。
特にこの仕事に関して、他人と共同することを海斗は酷く嫌っていた。
独りでいたいと同時に、自分と、自分がいる世界に、深く絶望していた。
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